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江津湖というのは私の郷里熊本のさして大きくはないが、水の美しさと清澄さ、数多の淡水魚の豊富さとで有名な湖である。阿蘇山がその水源地といわれ、水前寺という川が、山麓の森林地帯の地下水を集めて楽し気なせせらぎの音を立て乍ら、江津湖へ流れ注いで、湖水は何時も溢れるばかりの水をたたえている。(中略)
一体にこの地方は江津湖や水前寺川のみならず、到るところに沼沢や小川があって宛然一大水郷をなしている。従って魚心あれば水心・・・ではない、水心あれば魚心という具合で、夥しい川魚が棲息している。こんなところに育った関係から私は幼時から水と魚を相手に暮らして来たと言っても誇張ではない。素晴らしい美人や、美しい草花、それ等に増して「魚」を賛美するもの、それは私に取って自然な事だ。(堅山南風「想い出のままに」より抜粋)
・メール kakubinta@gmail.com
※カーソルを魚の写真の上に置くと種名が表示され、クリックすると詳しい解説を見ることができます。
タカハヤ
江津湖のあたりではアブラメともよばれます。
大きなもので全長10cm。鱗が小さく、さわるとヌルッとした感じがあります。
産卵期は5~7月頃、雌雄が群れになり砂礫中に卵を埋め込むように産むようです。
湧水地のように水が冷たくてきれいな場所の、植物の下や岩陰などによく群れています。このような魚が、江津湖のような市街地の川で見られるのは珍しいといえます。
2009年12月 江津湖で撮影
12月、湧水が流れ出る石積護岸のすき間に、タカハヤが群れていました。
一種の越冬場なんでしょう。
2016年3月 江津湖で撮影
こちらも湧水が流れ出るところです。
湧水域の最上流の岩陰や草陰に小さく細長い魚が群れていたら、タカハヤであることが多いです。
2024年8月 江津湖で撮影
湧水が流れ出るところでは、タカハヤたちが待ってくれています。
2020年8月 江津湖で撮影
同じくらいの大きさのタカハヤが体を押しつけ合って闘争していました。
小さく地味な魚ですが、夏にはオスがメスを追跡したり、集団で砂礫底に産卵したりと人知れず奮闘するタカハヤの生態を観察するのもまた楽しいです。
2020年8月 江津湖で撮影
江津湖の湧水地に大型のタカハヤがいました。
タカハヤたちは産卵のために湧水の湧き出し口に集まっていたのでした。