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江津湖というのは私の郷里熊本のさして大きくはないが、水の美しさと清澄さ、数多の淡水魚の豊富さとで有名な湖である。阿蘇山がその水源地といわれ、水前寺という川が、山麓の森林地帯の地下水を集めて楽し気なせせらぎの音を立て乍ら、江津湖へ流れ注いで、湖水は何時も溢れるばかりの水をたたえている。(中略)
一体にこの地方は江津湖や水前寺川のみならず、到るところに沼沢や小川があって宛然一大水郷をなしている。従って魚心あれば水心・・・ではない、水心あれば魚心という具合で、夥しい川魚が棲息している。こんなところに育った関係から私は幼時から水と魚を相手に暮らして来たと言っても誇張ではない。素晴らしい美人や、美しい草花、それ等に増して「魚」を賛美するもの、それは私に取って自然な事だ。(堅山南風「想い出のままに」より抜粋)
・メール kakubinta@gmail.com
※カーソルを魚の写真の上に置くと種名が表示され、クリックすると詳しい解説を見ることができます。
ムギツク
江津湖のあたりではコモソバエ、コムソウバエともよばれます。全長10~15cm。体の横に太い黒帯を持ち、頭の先は平べったく、口にはひげがあります。
流れが緩やかな場所を好みます。岩や杭の間などで、小さな虫などをつついて食べる姿がかわいらしいです。
産卵期は5~6月で、大きな石や岩、水草や流木に卵を産みつけます。オヤニラミやドンコに托卵することも知られています。
水中眼鏡をつけて川に潜り、水通しがよく岩や捨石が多いところでじっとしていると、ムギツクが岩陰から泳ぎ出してくることがあり、割と観察しやすいです。小学生だった1980年代中頃に、ゾウさんプールの岩の周りでムギツクを眺めるのが夏の楽しみの一つでした。
2019年3月 江津湖で撮影
つんつんと岩に付いた餌をついばむムギツクです。まだ若い個体で、体の黒い線がはっきりとしています。
2019年8月 江津湖で撮影
平瀬の捨石のあるところを泳ぐムギツク。
2021年3月 江津湖で撮影
春先に、捨石のある平瀬に群れていたムギツクの幼魚。
ムギツクに限りませんが、幼魚は警戒心が弱く割と近づきやすいです。