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江津湖というのは私の郷里熊本のさして大きくはないが、水の美しさと清澄さ、数多の淡水魚の豊富さとで有名な湖である。阿蘇山がその水源地といわれ、水前寺という川が、山麓の森林地帯の地下水を集めて楽し気なせせらぎの音を立て乍ら、江津湖へ流れ注いで、湖水は何時も溢れるばかりの水をたたえている。(中略)
一体にこの地方は江津湖や水前寺川のみならず、到るところに沼沢や小川があって宛然一大水郷をなしている。従って魚心あれば水心・・・ではない、水心あれば魚心という具合で、夥しい川魚が棲息している。こんなところに育った関係から私は幼時から水と魚を相手に暮らして来たと言っても誇張ではない。素晴らしい美人や、美しい草花、それ等に増して「魚」を賛美するもの、それは私に取って自然な事だ。(堅山南風「想い出のままに」より抜粋)
・メール kakubinta@gmail.com
※カーソルを魚の写真の上に置くと種名が表示され、クリックすると詳しい解説を見ることができます。
カネヒラ(Acheilognathus rhombeus)
全長が10cmを超える大型のタナゴで、フナと見間違うこともあります。産卵期のオスは体がピンク色に色づきます。
付着藻類やオオカナダモなどの柔らかい水草を中心とする雑食性です。他のタナゴは春から夏にかけて産卵しますが、カネヒラは夏から秋かけて、イシガイを好んで産卵するようです。
最近の江津湖ではイシガイをあまり見かけないため、カネヒラもとても少ないです。
2013年8月 江津湖で撮影
江津湖で数匹のカネヒラのオスたちが闘争を繰り広げていました。
2009年10月 江津湖で撮影
江津湖でのんびりと釣りをしていると、大型の平べったい魚が釣れました。カネヒラのメスでした。お腹から出ている黒い管は産卵管です。
これ以来、江津湖でカネヒラを釣ったことはありません。子供の頃には時々釣れていたのですが・・・。
2010年8月 緑川水系で撮影
夏の盛りに、水草の多い水路でカネヒラが釣れました。上がメス、下がオスです。
カネヒラたちは水草を活発に食べていたところでした。
2013年10月 緑川水系で撮影
イシガイなどの二枚貝が非常に多い用水路では、秋になると産卵期のカネヒラがちがたくさん集まっていました。速い流れの中でヒレを広げて闘争するオスのカネヒラです。
カネヒラの貴重な産卵場であったこの水路は、2013年度の公共工事で三面コンクリート水路となり、豊富にいた二枚貝たちとともに魚は激減しました。
2014年3月 緑川水系で撮影
上のカネヒラを撮影した水路底には、ご覧のようにドブガイ、イシガイ、マツカサガイがたくさん潜っていたのでした。
多少の環境配慮工法は取り入れられましたが、工事後にこのように大量のイシガイ類が住むことのできる環境はまだ回復していませんし、回復するのかどうかも分かりません。
2019年10月 緑川水系で撮影
緑川水系の水路で何とか生き残っているカネヒラ。
イシガイが潜っているらしい水路底をのぞいています。