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江津湖というのは私の郷里熊本のさして大きくはないが、水の美しさと清澄さ、数多の淡水魚の豊富さとで有名な湖である。阿蘇山がその水源地といわれ、水前寺という川が、山麓の森林地帯の地下水を集めて楽し気なせせらぎの音を立て乍ら、江津湖へ流れ注いで、湖水は何時も溢れるばかりの水をたたえている。(中略)
一体にこの地方は江津湖や水前寺川のみならず、到るところに沼沢や小川があって宛然一大水郷をなしている。従って魚心あれば水心・・・ではない、水心あれば魚心という具合で、夥しい川魚が棲息している。こんなところに育った関係から私は幼時から水と魚を相手に暮らして来たと言っても誇張ではない。素晴らしい美人や、美しい草花、それ等に増して「魚」を賛美するもの、それは私に取って自然な事だ。(堅山南風「想い出のままに」より抜粋)
・メール kakubinta@gmail.com
※カーソルを魚の写真の上に置くと種名が表示され、クリックすると詳しい解説を見ることができます。
イチモンジタナゴ(Acheilognathus cyanostigma)
その名の通り、体の横に薄緑色の「一の字」模様を持ち、産卵期のオスは桃色に色づいてきれいです。4~6月ごろ、ヌマガイなどのドブガイ類に産卵します。
もともと九州にはいなかった国内外来種です。滋賀県の琵琶湖でとれた稚アユを放流するときに、混じっていたものが広がったといわれます。
江津湖に本来生息する他のタナゴ類は、生息場所や産卵母貝、餌などをイチモンジタナゴに奪われているのではないでしょうか。
2010年5月 江津湖で撮影
春に止水的な環境で、婚姻色がきれいなイチモンジタナゴが捕れました。
私が高校生であった1990年ごろ、上江津湖の浅瀬で大量のイチモンジタナゴが捕れたことがありました。気まぐれに仕掛けたセル瓶に入ったのでした。
国内外来種なんて知らなかった頃です。その時に初めて見たイチモンジタナゴは、婚姻色が太陽の下でキラキラと輝いてとてもきれいでした。
2021年7月 江津湖で撮影
最近の江津湖では、思わぬところで多数のイチモンジタナゴを目撃することがあります。
これほど多くのイチモンジタナゴを賄うだけのイシガイ類が、江津湖かその周辺のどこかにいるのでしょう。